五年だって! じょ、冗談じゃない」
 僕は思わず大きな声を出した。十五ヶ年も、こんな狭い艇内に閉じ籠められ、ただ宇宙を飛び続けるのだったら、僕はその単調のために病気になってしまうだろう。恐らくフランケの外の誰もが僕と同じくさわぎたてるだろうと思い、まわりを見廻したのであるが、その予想は外《はず》れて、誰もさわがない。それには面喰《めんくら》わずにいられなかった。
「おどろいたねえ。諸君は、これから十五ヶ年も本艇に乗っていて、それで我慢が出来るのかね」
 僕はつまらんことを訊《き》いたものだと、云った後で気がついた。もちろん誰も僕に賛成しないのであった。それに、もっと面白くないことは、ベラン氏夫妻が、互いに手を取り合って、意味深長な目付をしたことであった。
「僕の惨敗だ。本艇に乗組んでいる者の中で、今度の宇宙旅行について一等何も知らない者は僕だということが今初めて分った」
 僕は長椅子の上に、どしんと腰を下ろした。
「おい岸、つまらんことで歎《なげ》くなよ。それは最も恐ろしい神経衰弱症の入口を作るからねえ」
 魚戸が傍へ来て、僕の肩を軽く叩く。
「僕のことなんか打棄《うっちゃ》っておいて
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