呉れ。無鉄砲を嗤《わら》われる資格は充分に有るのだから……」
 本年二十五歳の僕は、十五年後には四十歳になってしまう。おお四十歳。今僕の機嫌をとってくれている魚戸が今年四十歳の筈であった。
(おお、あたらわが青春を本艇の中で鋳潰《いつぶ》してしまうのか。ああ、われはあわれな宇宙囚! 残念な……)


   大警告


 艇長リーマン博士に面接する機会は、それから一週間後に来た。
 それまでの一週間の日を、僕たちは殆んどこの艇内の生活に慣れるために費《ついや》したようなものだ。
 僕の私室は十六号であった。
 魚戸の部屋は、その斜向《はすむか》い側の十七号であった。その隣室の十八号が、宣伝長イレネ女史の寝室だった。
 魚戸は、本艇に搭乗以来、僕を煙たそうにして避けているように見えた。そういう態度は、僕にとって決して愉快なことではなかったし、一方僕は前にも述べたように、この艇内に青春を鋳潰《いつぶ》すと決ったことの悒鬱《ゆううつ》さで、機嫌はよくなかったので、魚戸と喋ることは僕の方からも避けていたといえる。
 しかし僕は魚戸に対していいたいことはいくつか持っていた。その一つは、魚戸こそ僕を
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