あるが、イレネは冷然と僕の方にふりかえり、
「艇長リーマン博士から命ぜられたこと以外に、お喋《しゃべ》りが出来ません。あなたがたの紹介と、ここを記者倶楽部にすることと、宣伝長のわたくしが艇長と皆さんとの連絡係であること、以上三点をお話する以外、なんにも喋れないのですから、あしからず」
 と、突放《つっぱな》して部屋から出ていった。
「あれは一体なんだい」
 僕は呆れかえって思わずそう叫んだ。するとベラン夫妻がくすくすと笑った。あとの三人は笑わなかった。
「早速《さっそく》ですが、われわれ六名の記者団に団長と副団長とを選んで、本艇の幹部との交渉その他に当らせることにしたいと思いますから、ご賛成を願います」
 フランケが、軍人らしい態度と口調とで、僕たちに図《はか》った。
「たった六名の記者じゃないですか。そんな面倒なものは不要じゃないですか」
 と僕は早速反対した。ところが、こんどは僕ひとりが孤立となって他の連中は交渉委員の必要について賛成した。
「どうぞ御勝手に……」
「では選挙しましょう。これに御投票を」
 フランケが紙を配った。
 皆が書いてしまうと早速開票した。団長はフランケに決
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