く呻吟《しんぎん》するばかりだった。
 おおロケット! どうしたかリーマン博士! 彼はわれわれをこの艇内に押籠《おしこ》めて、地球を後に決然《けつぜん》大宇宙へ飛ぼうとするのだ!


   記者|倶楽部《クラブ》


 正六面体の例の部屋に、「記者倶楽部」という標札が掲《かか》げられた。給仕がやってきて、戸棚と向き合った壁の上に、その札を釘づけにしたのであった。
 それがきっかけのように、この部屋へぞろぞろと記者たちが集ってきた。ドイツ人の若い記者が二人、フランケにワグナーだ。フランス人の記者が二人、ベランという中年の男と、ミミというおそろしく派手な衣裳をつけた若い女。この二人は夫婦だそうである。そのほかに僕たちが二人で総勢六人であるが、この六名の記者の面倒《めんどう》を焼くリーマン博士の部下が一人、これが例のイレネだったことが分ったので僕は苦笑を禁じ得なかった。
 イレネは、過日魚戸と一緒に歩いていたときとは別人の如き取澄《とりすま》した表情で僕たちの前に立ち、六人の記者を一人一人紹介すると、そのまま部屋を出ていこうとした。
「もし、宣伝長。ちょっと待った」
 と、僕は声をかけたので
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