腰を下ろした。魚戸の顔色はよくない。
「君は一杯はめられたというが、その君は僕を一杯はめたのじゃないかね、リーマン博士と共謀して……」
「それは君の誤解だ。だからといって、君の疑惑がすぐ融けるとは思わない。それはいずれゆっくり釈明するとして、おい岸、われわれはこれからたいへんな旅行を始めるのだぞ。知っているか」
 料理の冷えるのも気がつかない様子で、魚戸は僕の方に身体をすりよせる。
 魚戸は、よほど衝撃をうけているらしい。そうなると僕は却《かえ》って気が落付いてくるのを覚えた。
「たいへんな旅行だということは、初めから分っていたのじゃないかね。リーマン博士曰くさ、『非常な超冒険旅行』でござんすよと、初めに僕に断ったが、君にはそれをいわなかったのか」
「それは聞いたとも。しかし『非常な超冒険旅行』といっても、程度というものが有るよ。そうだろう。君は知っているかどうか、僕たちが今乗っているこの乗り物を一体何だと承知しているかね」
 僕は、魚戸の真剣な顔付を気味悪く眺めながら、
「これは潜水艦だろう」
「ちがう」
 てっきり潜水艦だと思っていたのに、魚戸は言下に否定した。今度は僕が周章《あわ
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