に、その窓をのぞいてみた。
 そのなかに見た刹那の光景!
 ああ、これほど世の中に奇しき見世物があるであろうか。僕ははっと息をのんだまま、その場に硬直してしまった。
 おそろしい生物《いきもの》よ!
 その別室の床に、大の字なりに死んだようになって寝そべっていたのは、最初の一目では、一個の裸形の女と見えた。
 だが、次の瞬間、僕はそれを早速訂正しなければならなかった。
(女体らしい。しかしそれは絶対に人間ではない!)
 絶対に人間ではありえないのだ。
 なるほど四肢は豊満に発達し、皮膚の色はぬけるほど白く、乳房はゴムまりのようにもりあがり、金髪はゆたかに肩のあたりにもつれているところは女性人間のようであるが、よく見ると顔がのっペらぼうだ。そして頭髪の間から三本の角が出ていて、その尖端にたしかに眼玉と思うようなものがついている。そいつはぐるぐるとうごめいていたが、おどろいたことに、眼瞼と思われるものがぱちぱちと眼をしばたたいたのには愕いた。こんな人間は絶対にありえない。
 それから四肢だ。これをよく観察していると、腕はありながら、手首とか指などがない。その代り手首のあたりから先が、きゅう
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