ジオ・シチーの明かるい放送がはいってきた。
 二人がそれにききいっているうちに、高度はどんどんあがっていく。そして空がだんだん暗さをます。
 やがて星がきらきらかがやきはじめる。
「ポコちゃん、いつのまにかほくたちは成層圏《せいそうけん》へたっしたよ。ほら、空が暗くなってまるで夕方になったようだ」
 千ちゃんが指をてんじょうの方へむけていう。が、ポコちゃん、へんじをしない。それもそのはず、ポコちゃんは音楽をききながらいい気もちになってねむってしまったのだ。
「おやおや、のんきな坊やだなあ」
 そういっているとき、へんなこえが頭の上にした。
「もしもしカモシカ号。もしもしカモシカ号……」
 あ、下界からの超短波の無線電話のよびだしだ。
「ああ、こちらはカモシカ号です。山ノ井万造です。あなたはどなたですか」
「おお、カモシカ号ですね。ぶじですか。みんなしんぱいしていたところです。こっちは東京放送局の中継室ですが……」
「ぼくたちは元気です。しんぱいはいらんです」
「でもね、さっきから――そうです、四十分ほど前からこっちへずっとカモシカ号からのテレビジョンがとまっているのです。だからカモシカ
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