うと、操縦席はいつも直立不動で、操縦席にいる人間は家の中でいすに腰をかけてじっとしているのと同じことであって、たいへんらくである。
 そのかわり宇宙艇の頭は、すきとおったあつい有機ガラスと、じょうぶな鋼鉄のわくとをくみあわせて、半球形《はんきゅうけい》になっていて、操縦席がどっちへむこうとも、いつでも艇の外が見られるようになっている。
 艇は、垂直《すいちょく》に上昇をつづけている。
 太陽の光りはあかるく円屋根《まるやね》の左の窓からさしこんでいる。
 高度は、今しがた七千メートルを高度計のめもり[#「めもり」に傍点]がしめした。
 下界《げかい》は、はばのひろい濃いみどり色のもうせんをしいたように見え、そのもうせんの両側にガラスのような色を見せているのは海にちがいない。まるで白い綿をちぎったような小さな雲のきれが、艇と下界のあいだに浮いて、じっと、うごかないように見える。
「千ちゃん、たいくつだね。下界のラジオでもかけようか」
「うん。どこか軽快な音楽をやっている局をつかまえてくれよ」
「ああ、さんせいだね」
 ポコちゃんが短波ラジオのダイヤルをぐるぐるまわしていると、アメリカのラ
前へ 次へ
全91ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング