雲のような寝床の上にひとり取り残されて、ひとりごとをいった。
夢ではない。ほっぺたをつねれば、たしかに痛いし、手で鼻と口をふさぐと息がつまる――。すると、ジャンガラ星とかいう遊星の上にいることはほんとうらしい。
しかしジャンガラ星なんて、全く耳にしたことがない。もしそんなものがあるなら地球上の天体望遠鏡に見えるはずだ。第一、わが太陽系の諸遊星のうちで、空気のあるのは地球と火星だけだといわれているではないか。その他の星には空気がなく、こうして安楽に空気を呼吸していられないはずである。まことにふしぎといわなければならない。
「ああわかった。いつのまにか地球へまいもどったんだ。そしてぼくらの友だちが、ぼくをおどかそうと思って、あんなふうにキューピーのばけものみたいな仮装をつけて、ぼくをからかっているんだ。それにちがいない……。それに、あのカロチとか名乗る植物学者は、日本語をじょうずに話しているじゃないか。地球以外の星で、いきなり日本語がわかったり、日本語で話したりするはずがない。そうだ。ここはもとの地球なんだ。この部屋の外には、おおぜいの友だちが、腹をかかえて笑っているんだろう。はははは
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