塩田大尉機が待ちに待っていた機会がやってまいりました。それは、怪塔ロケットが上むきになったままガスをとめたので、ロケットはその重さでだんだん上昇速力がおちてきたのです。おそらくロケットは、やがてくるりと一転して下向きになるとともに、さっと水平に走りだすことでしょう。まるでインメルマン逆旋回みたいなわけです。
 ロケットが上昇速力をおとし、宙にとまりかけたところを、塩田大尉は見のがさず、
「今だ! 垂直旋回! 敵の舵機を払《はら》え!」
 と、大胆きわまる号令をかけました。

     4

 塩田大尉は、さすがにえらい軍人でありましたから、たいへんいいときに体あたりの命令を出しました。大尉の乗った偵察機は、垂直旋回のまま、怪塔ロケットの尾翼をねらって、みごとに「どぅん」とぶつかりました。
「ううむ、どうだ」
 必死のかくごで、ぶっつかったのです。飛行機の車輪でもって、怪塔ロケットの尾翼を蹴ちらしたのです。はげしい音と共に相手の尾翼はもぎとられ、火花のようなものがぴかりとひかりました。偵察機もまるでつきとばされたように、空中でもんどりうち、塩田大尉はじめ乗っていた者は、みなくらくらと目ま
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