にわかりません。まるでよっぱらいの足どりのようでありました。
3
怪塔が、よっぱらいの足どりのように、あっちへとび、こっちへとびしているのも、むりはないことでありました。なぜといって怪塔のなかでは、運転手の黒人が二人の怪塔王のめいめいにさけぶ、まるで反対の命令におびやかされて、あるときは天へ、またあるときは水平にと、めちゃくちゃにとびまわっているのでありました。
そのうちにも怪塔はいつしか、太平洋の上に出ていました。
夕焼の残りのひかりが、だんだんうすくなってきて、いまやあたりはとっぷり暮れようとしています。
塩田大尉は、死力をつくして、空中の怪塔ロケットをおいました。怪塔ロケットがまごまごしているおかげで、塩田大尉機は、ようやくそのそばにちかづくことができました。
「もうすこしだ、がんばれ」
塩田大尉は操縦員をしきりにはげましています。
「舵機《だき》をねらえ。こっちの車輪で、あの舵機を蹴《け》ちらせ」
大尉のあとにしたがう各偵察機は、これも大尉の気もちをさとって、われこそ体当りで怪塔ロケットの舵をこわそうと、一生けんめいにおいかけています。
そのうちに、
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