したが、そのとき天井にとりつけてある高声器が、とつぜんがあがあ鳴り出しました。
5
とつぜん頭の上で、があがあ鳴りだした高声器!
三人の黒人は、またびっくり。
しかし、もっとびっくりしたのは怪塔王でありました。彼はすばやく腰をかがめて、床のうえにおちていた木片をつかむがはやいか、天井の高声器めがけて、ぱっとなげつけました。
その木片は、高声器にあたらないで、そのまま下におちました。
このとき高声器の中から、しゃがれた声がとびだしました。
「こうら、ジャンにケンにポンよ。塔を横須賀の方へ飛ばしてはならんぞ。わしの命令だ。そむいた奴は、あとで魂《たましい》を火あぶりにするぞ」
そう言う声は、怪塔王とそっくりでありました。
「おやおや、先生はそこに立っているのに、三階からも先生の声がするぞ」
黒人は、びっくり仰天《ぎょうてん》です。
「こうら、はやく横須賀へやれ。わしのこの顔が見えないとでもいうのか」
と、室内の怪塔王はどなります。
「へえへ、それでは横須賀へ――」
と黒人は頭をさげながら、心の中に、
(はて、この先生の顔はどう見ても先生にちがいないが、言葉つ
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