、
「いや、そんなことはない。横須賀軍港であろうが何であろうが、わが塔のほこりとする磁力砲でたたかえば、軍港なんかめちゃめちゃだ。ワタクシ、心配しない。オマエたちも心配することはない」
と胸をはって、さけびました。
「いや、なかなか心配ある。軍港には、大砲ばかりでない。日本水兵なかなかつよいよ。それが塔の中へはいってくる。磁力砲では人間をふせぎきれない」
「そのときは、殺人光線でもって水兵をやっつける」
「だめだめ。殺人光線は、かずが一つしかない。大ぜいの水兵がせめてくると、殺すのがなかなか間にあわぬ」
「いや、だめでない」
「いやいやだめだめ」
黒人がさかんに言争っているのを、そばでは、アラビヤの王様が着ているような長いマントを着た怪塔王が、むずかしい顔をして聞いていましたが、
「お前たちは黙んなさい。わしの命令だ。さあはやく、横須賀へ飛ばせるんだ」
と、手をふれば黒人は、怪塔王のけんまくにびっくりして、円筒のなかにくびをひっこめました。
この黒人たちは、この怪塔の運転手でありました。怪塔王が特別に教えこんであるなかなか重宝な運転手です。いよいよ怪塔はまた飛びだすことになりま
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