と、三人が三人ともそう思いました。
「こら、お前たち。あの警報ベルがなっているのが聞えるだろうな」
「は、はーい」
「あれはお前たちも知っているとおり、この塔の一部がこわれたのを知らせているのだ」
「はい、はい」
「このままでは危険だから、塔をはやくうごかさにゃあぶない」
「はあ、そのとおりです。私どももさっきからそれを申していましたので……」
「じゃあ、すぐうごかせ。よく気をつけてうごかすんだぞ」
「先生、どっちへ塔をうごかしますか」
「うん、それは――」
と怪塔王はちょっと考えて、
「そうだ、横須賀《よこすか》の軍港へ下りるように、この塔をとばしてくれ」
「へえ、横須賀軍港! それはあぶない」
黒人は、横須賀軍港と聞いて、顔色をかえました。
4
「横須賀の軍港とは、ワタクシおどろきます」
と、円筒のなかの黒人は、大きなためいきとともに、怪塔王にあわれみを乞《こ》うように言いました。
もう一人の黒人もふるえごえを出して、
「横須賀の軍港へこの塔をもっていくと、ワタクシたちまるでわざわざ虜《とりこ》になりにいくようなものです」
のこりの黒人は、ただひとり元気よく
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