なかにはいったきりで、外へ出ようにも鎖《くさり》でつながれているから、出られやしないじゃないか」
 こういう話を、さっきから階下へ通ずる階段の途中で、じっと聞いていた一人の人物がありました。
 彼は、もういいころと思ったのか、そっと階段をのぼりきって、黒人の前へいきなり顔を出しました。
 おどろいたのは黒人です。
「わっ、先生だ!」
 三階にいるはずの怪塔王が、なぜ階下からあがってきたのでしょう。

     3

 ジャン・ケン・ポンの三人の黒人は、大あわてです。さっそく円筒のなかに首をひっこめ、蓋をがたがたしめようとしますが、あわてているので、なかなかうまくしまりません。
「おい、こら。ちょっと待て」
 と、階下から来た怪塔王は言いました。
「へーい」
 三人の黒人は、蓋を頭の上にのせたまま、また首を出しました。
 そのとき黒人は、心のなかで、「おや!」と思いました。それは怪塔王が、へんな服を着ているからでありました。それはいやに長くすそをひいた、だぶだぶの外套《がいとう》みたいな服でありました。それは黒人たちが、はじめて見る服装でありました。
(先生は、へんな服を着ているぞ)
 
前へ 次へ
全352ページ中87ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング