なかにはいったきりで、外へ出ようにも鎖《くさり》でつながれているから、出られやしないじゃないか」
こういう話を、さっきから階下へ通ずる階段の途中で、じっと聞いていた一人の人物がありました。
彼は、もういいころと思ったのか、そっと階段をのぼりきって、黒人の前へいきなり顔を出しました。
おどろいたのは黒人です。
「わっ、先生だ!」
三階にいるはずの怪塔王が、なぜ階下からあがってきたのでしょう。
3
ジャン・ケン・ポンの三人の黒人は、大あわてです。さっそく円筒のなかに首をひっこめ、蓋をがたがたしめようとしますが、あわてているので、なかなかうまくしまりません。
「おい、こら。ちょっと待て」
と、階下から来た怪塔王は言いました。
「へーい」
三人の黒人は、蓋を頭の上にのせたまま、また首を出しました。
そのとき黒人は、心のなかで、「おや!」と思いました。それは怪塔王が、へんな服を着ているからでありました。それはいやに長くすそをひいた、だぶだぶの外套《がいとう》みたいな服でありました。それは黒人たちが、はじめて見る服装でありました。
(先生は、へんな服を着ているぞ)
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