きがすこしちがっているような気がするぞ。しかし先生と顔がおなじ人が二人あるとは思われない。なんだかこれはわからなくなったぞ)
 そう思っているところへ、頭の上から、
「こうら、ジャンにケンにポンよ。わしの声がわからないか。お前たちの前にいるのは、にせ者のわしだぞ。言うことを聞いてはいけない」
「えっ、それでは――」
 と、三人の黒人は目をくるくるさせて天井を見あげたり、室内の怪塔王の顔をながめたり。
「わしがここにいて、命令をしているのに、お前たちはなにをさわいでいるのか」
 と、室内の怪塔王は不機嫌です。

     6

 顔の怪塔王と声の怪塔王!
 塔の中に怪塔王が二人出来てしまいました。黒人はおおよわりです。なぜって、顔の怪塔王が横須賀へ飛べというのに、声の怪塔王は横須賀へ飛んではならないと命令するのです。一体どっちにしたがったものでしょうか。
 もし帆村探偵がそこに居合《いあ》わせたなら、どっちが本当の怪塔王かを言いあてたことでしょう。その帆村探偵はこの塔の中にいるはずですが、まだ姿をみせません。一彦少年も、どこになにをしていることやら。
「なにをぐずぐずしている。塔をはやく
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