、ないぞ。一体どこへいった」
と、怪塔王は、きょろきょろあたりをふりかえってみました。
「やっぱりない。変だなあ」
怪塔のまわりは爆弾と銃丸とですっかり囲まれてしまっているのに、彼は一向《いっこう》そんなことには心配しないで、なにかしら「ないぞ、ないぞ」といってくろい風呂敷を頭からかぶってさわいでいるのでありました。なにかたいへんなことが起ったらしいのです。
そのとき、電話の呼びだしのベルが、けたたましくなりだしました。しかし怪塔王は、そんなことに、見向きもしません。
また、室内の配電盤の上には、赤い「注意」灯がしきりについたりきえたりして、怪塔王に或《ある》ことを「注意」しているのですが、これにも怪塔王はみむきもしません。一体怪塔王は、なにをそんなにあわてているのでしょうか。
その一階下は、つまり怪塔の二階で、ここは械械室でありました。いろいろなわけのわからない、こみいった機械がならんでいましたが、その中に、郵便箱ほどの大きさの円筒が三個、はなればなれにたっていました。これはなんであるか今までよくわかりませんでしたが、ちょうどこのさわぎのとき、円筒のふたがぱくんとあいて、そ
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