うった弾丸は、怪塔のまわりに弾丸の壁をつくってしまった。だから怪塔は爆弾と弾丸とに囲まれてしまったのだ。こうなれば、怪塔の上から檻《おり》をかぶせたようなものさ。怪塔がとびだそうと思っても、爆弾や弾丸が邪魔になって、とびだせない。どうだ、うまくいったろう」
塩田大尉は、たいへんうれしそうに見えました。
しかし皆さん、塩田大尉の考えはまちがっていないでしょうか。怪塔は、はたして檻の中の鷲《わし》のようになったでしょうか。なにしろ相手は鉄片をそばによせつけないという、不思議な力のある怪塔ですぞ。
怪塔王のさがしもの
1
怪塔王は、塔の三階の室内を、あっちへはしりこっちへかけだし、そして机のひきだしをあけたり、蒲団《ふとん》をまくったりして、しきりになにかを探していました。
「ないぞ、ないぞ。どこへいったのだろうか」
怪塔王が顔をあげたところをみますと、きょうはどうしたわけか、頭の上からすっぽりとくろい風呂敷《ふろしき》のようなものをかぶっています。つまり顔を、くろい風呂敷で包んでいるのです。怪しい怪塔王は、いよいよもって怪しいことになりました。
「ないぞ
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