ろながめています。すると、――

     7

 塩田大尉の命令で、六機の偵察機は怪塔のまわりをぐるぐるまわりながら、はげしく機関銃をうちはじめました。
 もちろん、怪塔をねらって機関銃をうっているのですけれども、どうしたことか、弾丸はすこしも怪塔にあたりません。
「これは変だぞ」
 と、怪塔王のあやしい力をしらないうち手は、小首をかしげました。
 弾丸はどこへいったのでしょうか。
 このとき誰か塔のちかくによって、よく見たといたしますと、弾丸は、塔の壁から一二メートル外側のなんにもない宙に、ごまをふったように、じつと停っているのが見えたことでしょう。
 塩田大尉は、機上から双眼鏡の焦点をしきりにあわせていましたが、このように、弾丸の壁ができているのをみてとると、にっこりとわらいました。
「よし、これでよし」
「塩田大尉、なにがよいというのですか」
 と、小浜兵曹長がたずねました。
「うむ、つまり怪塔のまわりを爆弾と弾丸とですっかり囲んでしまったのだ。ねえ、そうだろう。上からおとした爆弾は、塔の屋上から何メートルか上に傘をさしたようにならんでいて、それから下におちてはこないし、また今
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