かしらん」
「塩田大尉、まるで魔術みたいですな。こいつはおどろいた」
 と、小浜兵曹長もすっかり面くらっております。
 塩田大尉は腕をこまねいて考えこんでいましたがやがてうむと大きくうなずき、
「小浜、怪塔を機銃でうってみよう。偵察機全機でうちまくってみるんだ。命令を出せ」
 大尉は機銃射撃を決心いたしました。
 命令はすぐ発せられました。
 塩田大尉ののっている司令機のうしろについていた五機の操縦士は、前門の機銃の引金をいつでも引けるように用意をして、あとの命令をまちました。
 そのうちに、
「怪塔を射撃用意! 目標は三階の窓、塔のまわりをとびながら、射撃せよ。撃ちかたはじめ!」
 命令が下るがはやいか、だんだんだんだんだん、どんどんどんどんと、さかんな射撃をあびせかけること一分あまり。
「撃ちかた、やめ!」
 で、射撃はぴたりと、とまりました。
 どうも不思議です。怪塔の窓にはたしかに板ガラスが入っているのでしょうに、すこしもこわれません。怪塔の外壁に弾丸《たま》があたれば、煙みたいなものが出るはずだが、それも見えませんでした。
 さすがの塩田大尉もいらいらしながら、塔の方をじろじ
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