、ことごとく不発におわりました。一体どうしたというのでしょう。
 塩田大尉は、偵察機を急降下させて、地上の様子をさぐろうと決心いたしました。
「急降下、高度百メートル附近! 南北の方向に怪塔を偵察」
 そういう命令を出しますと、偵察機はただちに、獲物をめがけてとびおりる鷹《たか》のように地上めがけてまいおりていきました。
 塩田大尉は、双眼鏡をとってしきりに、怪塔のあたりを見ています。
 そのとき大尉は、小首をかしげ、
「ああっ、あれはなんだろう。おい、小浜あそこを見ろ」
「どこです。塔の上ですか」
 二人の双眼鏡の底には、一体どんな不思議な光景がうつったでありましょうか。

     6

 低空におりた偵察機上にあって、塩田大尉と小浜兵曹長の見たものは、怪塔がへんな傘《かさ》をきていることでありました。
 へんな傘とは、どんな形のものであったでしょうか。それは塔の頂上から五六メートル上に、不発の爆弾がたくさん同じ平面上にならんでいるのがちょうど傘をかぶったように見えるのです。
「これは不思議だ。上からおとした爆弾が、下におちないで、あのように宙ぶらりんになっている。一体どういうわけ
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