と、兵曹長は片手で受話器を耳の方におさえつけ、一字ものがすまいと、まちかまえていました。
すると、いよいよ怪電波は、通信文をつづりはじめました。
さあ、なにをいってくるのか?
「――カイトウオウトワボクセヨ、ホムラ」
電文は、「怪塔王と和睦せよ、帆村」というのであります。小浜はまったく意外な電文だとはおもいましたが、すぐそのまま塩田大尉のもとに報告いたしました。
おどろいたのは塩田大尉です。
「なんだ、怪塔王と和睦せよ――というのか。帆村荘六は気が変になったか。それともこれは怪塔王のにせ電文かもしれない」
帝国海軍の最大主力艦であるところの、軍艦淡路をめちゃくちゃに壊した乱暴者の怪塔王を、どうしてゆるせましょう。その怪塔王と仲なおりをしなさいという帆村探偵の電文は、どう考えても腑《ふ》におちません。
帆村探偵はとうとう怪塔王のために捕虜となり、そしてむりじいにこんな電文をうたせられたのではないでしょうか。
「おい小浜兵曹長。いまの無電は、この前軍艦淡路できいたのと、同じ無電機でうってきたのだろうか」
「はい、同じものだとおもいます。音は大きくなりましたが、向こうの機械は、
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