よほどあやしい機械とみえまして、音がふらふらよっぱらいのようにふらついてきこえます」
「ふん、まるで上陸した夜の、貴様の足どりみたいだな」
 と、塩田大尉はおどろきの中にも、勇士のおちつきをみせて、からかえば、
「いや、どうも」
 と、兵曹長は頭をかきました。

     3

 機上の塩田大尉は腕ぐみして、「怪塔王と和睦をしろ」という無電を、一体誰が出したかと思案中です。
「すると、やっぱりこれは帆村探偵が出している無電にちがいない。怪塔王が、怪塔にそなえつけの無電機をつかって、電文を打って来るのなら、こんな貧弱なそしてふらふらした、無電ではない」
 帆村が怪塔王に降参した、としか思えないのでありました。
 そのとき、平磯基地をとびだした爆撃機隊から、連絡無電がはいってきました。
「本隊は、高度三千メートルをとりて、鹿島灘上に待機中なり、貴官の命令あり次第、ただちに爆撃行動にうつる用意あり、隊長|松風《まつかぜ》大尉」
 爆撃機隊は、海上三千メートルのところをぶらぶらとんでいて、塩田大尉が命令を出しさえすれば、すぐにどこでも爆撃するという電文です。いよいよおそろしい空からの爆撃戦が用
前へ 次へ
全352ページ中77ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング