「ふうむ、北の方角だな。ついでにどの地点かわかるといいのだが――」
「はあ、それもやってみました」
「やった?」
「はい、ちょうど駆逐艦|太刀風《たちかぜ》が、鹿島灘《かしまなだ》の東方約二百キロメートルのところを航海中でありましたので、それに例の怪電波の方角を測ってもらいました。あいにく洋上は雨風はげしく、相当波だっていますそうで、太刀風の無線班も大分苦心をして時間がかかりましたが、それでもついにわかりました。太刀風からはかった怪電波の方角は、大体真西から北へ十度ということになりました」
「そうか、真西から北へ十度かたむいているというと――日立鉱山のあたりか、勿来関のあいだとなるね」
「はい、線をひいてみますと、こうなりますから――」
 と、兵曹長は、太平洋上から青い鉛筆で線をつけだして、それをずっと西へひっぱっていった。そうするとさっきひいた赤線と、いまひいた青線とが交ったその地点こそ、勿来関!

     4

 方向探知器というものは、たいへん重宝《ちょうほう》な機械でありました。怪塔のかくれている地点から発射するよわい電波を、九十九里浜にいる軍艦淡路と、太平洋を航行中の駆逐艦
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