をぴくりと動かしたりしました。
「塩田さん、だいたいよく見まわりました。一番おもしろいのは、この通風筒ですよ」
といって、博士はそばにたっている通風筒を振返りました。この通風筒というのは、煙管《キセル》の雁首《がんくび》の化物みたいな、風をとおす大きな筒です。それは鉄板でできていましたが、それがまるで大風にふきとばされたようにひん曲り、しかもその上にいくつもぶつぶつと大小の穴があいているのでありました。
「塩田さん、この通風筒をすこしばかり貰《もら》ってゆきますよ。もってかえって、よく研究してみなければならぬ」
そういうと、大利根博士は、白墨をポケットから出して、通風筒の穴のまわりに、丸印だとか三角印だとかをかきました。それから写真機を出して、その部分をいちいちていねいにうつしました。
それがすむと、博士はどこに隠しもっていたのかへんなかたちの鋏《はさみ》をとりだし、鉄でできた通風筒をまるでボール紙をきるかのように、ざくざくざくと切りとりました。
「まあ、よく切れる鋏だこと」
と、ミチ子は、そばからみていて、感心していいました。
すると大利根博士は急にふりかえって、怒ったよう
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