、軍艦淡路をおとずれたのは、約束より三日もあとのことでありました。
「やあ、ひどいことになったものですね」
 博士は腰をたたきながら、にこにこ顔で舷梯《げんてい》をのぼって来ました。
 艦長|相馬《そうま》大佐をはじめ、幕僚たちや検察隊長の塩田大尉なども、大利根博士を出迎えていました。
「これは相当の威力をもっている秘密兵器でやられたのですね。たいへん面白い。すぐにしらべてみましょう」
 と、甲板のうえから、艦橋が飴細工《あめざいく》のように曲っているのを見上げて、しきりに首をふって感心していました。
「大利根博士、お茶をめしあがれ」
 ミチ子が水兵さんに代って、紅茶をすすめました。
「やあ――」と博士は目をまるくして、「おや、このごろは軍艦では、女の給仕をつかうようになったんですか。あっはっはっ」
 ミチ子は、顔をあかくしました。

     7

 大利根博士は、竿竹《さおだけ》のようにほそい体をいろいろに曲げては、飴細工のように曲ったり溶けたりしている軍艦淡路の艦体をいちいちていねいに見てまわりました。
 博士は感心するたびに、つよい近眼鏡のおくに眼玉をひからせたり、ぼうぼうひげ
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