のです。ですから、これを征伐するにしても、なかなか研究をしてかからねばなりません。そこで私たちは、艦長などとも相談の結果、日本一の大科学者といわれる大利根博士《おおとねはくし》に来ていただくことにして博士のお智恵を借りることにきめたのです。博士に来ていただけば、必ず怪塔王征伐のいい方法がみつかるにちがいありません」

     6

 大利根博士は、日本一の科学者でありましたが、また日本一の変り者でもありました。博士はいつも地下室の研究所にたてこもっていて、なかなか外へ出て来ません。誰かがたずねていっても、よほど機嫌《きげん》のよい時でないと、顔を見せません。ですから、強い近眼鏡をかけ、ひげぼうぼうの痩《や》せた小さい顔をもった大利根博士を見た人は、よほど運がよかったことにされていました。大抵の場合は、博士邸の玄関にそなえつけてある電話機でもって、奥の間にある博士と電話で用事を話しあって、用を果すのが普通でありました。その電話さえ、時によると、博士が電話口にあらわれて来ませんために、二日でも三日でも玄関にがんばって、いくども電話をかけてみるよりしかありませんでした。
 その大利根博士が
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