をやろうと考えているのでしょうか。
 軍艦淡路の検察隊長塩田大尉は、こうなったことについて残念でたまりません。
 そこへ一彦の妹のミチ子が、兄のことを心配してたずねて来たものですから、塩田大尉の胸のなかは、にえくりかえるような有様でした。
「ミチ子さん、まあ、おかけなさい。ほんとうにお気の毒なことになりましたね」
 ミチ子の捷毛《まつげ》は心配のあまり涙でぬれていました。
「大尉さま、兄さんはもうかえってこられないのでしょうか。帆村おじさんも一しょに行ってしまって、あたしの身よりは、もう一人もなくなりましたわ。あたしが男だったら、怪塔王のあとを追って、兄さんたちを救いだしにいくのですけれど――」
 塩田大尉も目をしばたたき、ミチ子の頭をやさしくなでながら、
「ミチ子さんは、そう心配しないがいいですよ。私たちがきっと探しだします。本艦をこんなひどい目にあわせたのもどうやら、ミチ子さんのいう怪塔王の仕業《しわざ》のようですから、これはどうしても私たちの手で怪塔王征伐をしなければならないと思います。しかしながら、あの怪塔王は、私たち専門家が考えても不思議でならないほどの恐しい武器をもっている
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