大尉はやっとわれにかえって号令を下しました。だが、今さらうしろから撃ってみても、どうにもならぬことを知ると、大尉はついに撃方《うちかた》はじめを命じませんでした。
それに代って、信号兵がえらばれ、本艦との間にさかんに手旗信号が交されました。本艦でも、まったく不意うちのありさまで、甲板にいた水兵さんたちも、あれよあれよと、ロケットの出すガスの尾を見まもるばかりでしたが、この時勇ましい爆音が艦上に聞えると思う間もなく、二台の艦載機が、カタパルトの力でさっと空中にとびだしました。これは怪塔ロケットを追跡していくためでありました。乗手は有名な金岡大尉と三隈《みくま》一等航空兵曹とでありました。
しかしこの名手たちも、やがてがっかりして艦の方にまいもどってきました。空中からの報告が発せられました。
「司令。追跡してみましたが、とても向こうの速度がはやいので、どうすることもできません。怪ロケット機の姿を、ついに真北の方角に見失いました」
5
それっきり、怪塔ロケットの行方はしれなくなってしまいました。
帆村探偵や一彦少年はぶじでいるでしょうか。また怪塔王は、次にどんなこと
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