ます。ですから、相当の分量を積んでもたいした場所ふさぎにもなりません。
怪塔ロケットには、いつのまにか屋根のようなものが出て、形を流線型にしています。また尾翼もいつの間にか胴中からひきだされました。古びた怪塔は、まったくここに最新のロケットに形をあらためてしまったのです。
なんという物凄《ものすご》い怪塔でしょう。
4
行方不明の怪塔が、いきなりロケット機に早がわりをして天空にとびだしたのですから、これには誰しもおどろきました。
なかでも一番おどろかされたのは、ちょうどあの時、現場ちかくの砂地を一生懸命にしらべていた軍艦淡路の陸戦隊員でありました。
それまでは、平《たいら》な砂浜としか見えなかった大地から、ごうごうばしゃんと大音をたて、いきなり怪塔に翼を生やしたロケットがとびだしたのですから、これは、いかに戦闘にめざましい手柄をたてる皇軍勇士であっても、驚かないではいられません。
隊長の塩田大尉さえ、
「おおっ、ありゃ何だ!」
と叫んだきり、しばらくは天空によじのぼってゆく怪塔ロケットをただ惘然《ぼうぜん》とながめつくしたことでした。
「立ちうち! 構え!」
前へ
次へ
全352ページ中62ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング