ていたのです。それから先は、機関をどんなにうごかしてみても、びくとも艦《ふね》はゆるがず、そのうちに軍艦の底の割れ目から海水がはいってきて、大きな艦体は、舳《へさき》を上にして傾《かたむ》いてしまいました。
これが夜中の出来ごとなので、そのさわぎといったら大へんでありました。村の人々は軍艦淡路のふきならす非常汽笛に目をさまして、すぐさま、まっくらな浜べにかけつけたそうです。そのとき軍艦は探照灯をつけ、空にむけてしきりにうごかしていたといいます。
一彦とミチ子とは、ぐっすり眠っていて、朝になるまでそれを知らなかったのです。
2
一彦とミチ子は、昨夜の怪事件を知ると、驚きのあまり、朝御飯もたべないで浜べにかけつけました。
「あっ、あれが軍艦淡路だ。すごいなあ」
「あら、あんなに傾いているわ。兄さん、あの軍艦は沈みはしないかしら」
「さあ、どうだか。誰かに聞いてみようよ、ミチ子」
兄妹は、浜べにあつまった人たちの間をぬって、誰か事件にくわしい人はいないかしらとさがしまわりました。すると、そのときボートが浜べについて中から水兵さんが、どやどやと下りてきましたが、そのうちの
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