、一大事件があったのを一彦とミチ子とが知ったのは、その翌朝のことでありました。
一大事件とは、一体どんなことだったでしょうか。軍艦|淡路《あわじ》――といえば、みなさんも、すぐ、あああの最新式の戦艦のことかとおっしゃるでしょう。そうです、軍艦淡路は、帝国海軍が世界にほこる実にりっぱな戦艦であります。工廠《こうしょう》で作りあげられ、海をはしるようになってからまだ一箇月にもなりません。いままでの戦艦とはちがって、たいへんスピードが早く、これまでの戦艦とは全くちがった不思議な形をしていました。まるで要塞《ようさい》が海に浮かんだような恰好だと、誰かがいいましたが、そのとおりでした。
その軍艦淡路が、昨夜九十九里浜の沖で、どうしたわけか進路をあやまって、浅瀬《あさせ》にのりあげてしまったのです。
いくら大きな最新式の軍艦でも、浅瀬にのりあげるとは変なことではありませんか。
航海長は、決してあやまちをした覚えがないといっています。
ただ不思議なことに、九十九里浜沖を走っていた軍艦淡路は、いつの間にか陸の方へひきよせられ、そして変だなと気がついたときは、もう遅く、浅瀬にのりあげてしまっ
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