つけて、むりをしてはるか下をながめたときに、やっとその大地と海面とが、まるで模様かなにかのように足下に小さく見えているのを見つけたのです。おどろいたことに、怪塔はいつのまにか大地をはるかにはなれていました。そして天へむかって、ものすごい速さでびゅうびゅう飛んでいくのでありました。
「一彦君、これはたいへんだ。僕たちはいま空中をとんでいるのだよ」
「えっ、空中をとんでいるの。やはりそうだったの。僕は頭がなんだかぼんやりしてしまった」
 といったのも道理です。二人のとじこめられた怪塔は、いま空中を弾丸のようにとんでいくのでありました。今まで塔だとばかり信じていたのは、普通の塔ではなかったのです。空中を飛行機よりも早く走るといわれるあのロケット機であったことがわかりました。

     3

 いま帆村探偵と一彦とは、怪塔ロケットに閉じこめられたまま、思いがけない空中旅行をしています。
 怪塔ロケットを操縦しているのは、いわずと知れた怪塔王です。
 一たい怪塔王のほんとうの名前はなんというのでありましょうか。まだだれもそれを知りませぬ。
 このロケットというのは、だいたい砲弾に尾翼を生《は》
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