と上の方にとびだしました。
「あっ、とびだした」
「うむ、やったな――」
帆村と一彦は、いいあわせたように跳ねおきると、かたわらの小さな窓の鉄枠につかまって、一生けんめいに窓のそとをのぞきました。
さあ、そのとき二人の眼に、どんな光景がうつったことでありましょうか。
2
ごうごうと、ものすごい音をたてて震える怪塔の中!
その窓わくにとりすがって、外をのぞいた帆村探偵と一彦少年!
「ああっ、これは――」
と、はげしいおどろきの声が、二人の口から一しょにとびだしました。
窓の外の、まったくおもいがけない光景――ああこんなことがあってよいものでしょうか。そこに見えたものは、あの赤土の壁でもありませんでした。また二人が見なれた白い砂浜と、青い海原にとりかこまれた森の中の風景でもありませんでした。それはなにもない空でした。いや、なにもないわけではありません。白い雲が、あっちこっちにぽっかりうかんでいます。たったそれだけです。大地や海原はどこへいってしまったのでしょうか。
二人は、大地と海原とをみつけるのに、大骨をおりました。なぜといって、二人が窓わくに顔をぎゅっとおし
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