しの体に、そんなピストルのたまがはいるものかと、さっき教えておいたじゃないか」
 と、怪塔王はにくにくしげに笑いながら、すこしずつ帆村と一彦の方にすり足で近よってきます。
 帆村は、もう駄目だとは思いましたが、それでも一彦だけはなんとか助けたいものと、うしろへかばっています。怪塔王が一歩すすめば、彼もまた一歩うしろにしりぞきます。そうしてじりじりと怪塔王におされていくうち、とうとう二人は壁ぎわへ、ぴったりおしつけられてしまいました。
「さあ、いくぞ!」
 怪塔王はいきなり大声をはりあげると、隠しもっていたフットボールほどの球を、頭上たかくさしあげました。
「これは殺人光線灯だ。貴様たち、今このあかりがつくのを見るじゃろうが、その時は、お前たちの最期だぞ。わかるじゃろう。そのときは殺人光線が貴様たちの全身を、まっくろこげに焼いているときじゃ」
 ああ、あぶないあぶない。殺人光線灯のスイッチを入れると、すぐにそのあかりはつきましょう。そうなれば帆村も一彦もくろこげになって死ぬというのですから、二人の命は、もはや風の前の蝋燭《ろうそく》とおなじことです。
(どうしよう?)
 と、一彦は帆村に
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