陸戦隊が地上を一生懸命さがしますが、そこには塔のかげもかたちもなかったというのも、この怪塔が地面の下におりてしまったためです。塔の屋上は砂原を帽子にしてかぶったような有様になっています。ですから塔の頂上が地面のところまで下りますと、あたりの砂原と見わけがつかなくなります。そこへ風が吹いてきて、あっちへ、こっちへと砂をふきとばせば、いよいよ塔が埋まっていることがわからなくなります。
怪塔の秘密の一つは、こうして帆村探偵のあたまのはたらきで解けました。
怪塔王がそれと知ったら、さあ、なんと思うことでしょうか。
3
「じゃあ、帆村おじさん、この土を上へ掘っていくと、地上に出られるわけだね」
と一彦が、塔の出入口のそとに見える土壌をゆびさしました。
「それはそうだが、ちょっと掘るというわけにもいかないね」
といっているところへ、突然二人の頭の上で、破鐘《われがね》のような声がとどろきました。
「わっはっはっ、もういいかげんに、話をよさんか」
そういう声はまぎれもなく、高声器から出る怪塔王のあのにくにくしい声でした。
「やっ、また出てきたな、怪塔王、声ばかりでおどかさずに
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