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 怪塔が、エレベーターのように、地上から大地の中におりたという帆村の考えは、じつに思いきった見方でありました。
「おじさん、本当かい。怪塔がエレベーターのように下るんだって、ははははは」
 と、こんどは一彦君が笑いころげました。
「いや、ちっともおかしくない」と、おじさんは大真面目でいいました。「いいかね一彦君。僕たちがこの出入口の錠をはずして、この部屋へはいったときには、もちろん扉の外は道路になっていた。ところが今は、扉の外には道路がなく、そして土壌があるというのでは、塔が地中にもぐったものとしか考えられないではないかね」
「だって塔が下るなんて、信じられないや」
「一彦君、お聞き、エレベーターだって、五十人も百人ものれる大きなやつがあるんだぜ。この怪塔王という不思議な人物は、戦艦をこの塔へひっぱりつけたほどの怪力機械をもっているのだから、この怪塔を上げ下げすることなんか朝飯前だろう」
「な、なーるほど」
 一彦ははじめて塔が地中に下るわけが、なんだかわかったような気がいたしました。
 もちろん皆さまは、ずっと前からそれがよくおわかりになっていたことでしょう。軍艦淡路の
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