のことではない。いまいった土のことを土壌というのだよ。つまり大地を掘れば、その下にあるのは土壌ってえわけさ」
「なんだ、ただの土のことか、僕は魚のどじょうのことかと思ったから、それで驚いてしまったんだよ」
「いや、君はときどき面白いことをいうね。いま君に笑わせてもらったお陰《かげ》で、おじさんはたいへん気がおちついてきたよ」
と、つづいてにやにや笑い、
「そこで一彦君、もう一つ君にお礼をいわなければならないことは、いま君に土壌とはどんなものかと説明している間に、この出入口をふさいでいる土壌の謎をとくことができたよ」
帆村探偵が、この不思議な土壌は、そもそもどこから来たかという謎をといたといったものですから一彦少年は目をまるくしました。
「といたの? おじさんは謎をといたんだって。じゃあ早く教えてよ。なぜこんな土を持ってきたの」
「といてみればなんでもないことさ」と、帆村はこともなげにいってのけ、「つまり、この土壌は、大地を掘ったところにあるはずのものだから、しからばいまこの怪塔は、エレベーターのように、地上から大地の中におりているのである。さあどうだ、おもしろい考え方だろう」
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