力のあらんかぎりおさえていました。

     4

 きわどい冒険がつづきます。
 一彦は怪塔の鉄檻の下にわずかにあいた隙間をくぐって、死にものぐるいで外にぬけようとしています。
 うまく頭が向こうへ出ました。
 一彦はなおも一生懸命に、両足で床をうんとけりました。すると肩が檻の向こうへ出ました。つづいて手が出ました。
「もう大丈夫!」
 あとはするりと向こうへぬけ出ました。
「おじさん、抜けられたよ。おじさんも出られないかなあ」
 と、一彦は鉄格子につかまって、帆村の方をのぞきこみました。
 そのときです、鉄の檻が、がたんとうごきだしたのは。
 それはきっと一彦が檻を出るときに、うれしさのあまり檻を足で蹴《け》ったので、その震動が怪塔王の耳にはいり、鉄檻に隙間があってよく下りきらないのを知ったため、檻をむりにも下に下そうとしているのでありましょう。
 丸太ん棒がみしみし鳴りだしました。鉄の檻が力一杯丸太ん棒を圧《お》しつけ、これをくだこうとしているのです。
 しかし丸太ん棒です。上から圧すのは鉄の檻にしろ、そうかんたんにくだけるはずがありません。めきめきという音がするばかりで、一向
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