《いっこう》隙間は狭くなりません。
「一彦君、その棒の向こうの端をもって、力一杯おこしてみないか。隙間がもうすこし大きくひろがるかもしれないから」
さすが帆村探偵です。たいへんいいところに気がつきました。
一彦は檻の外へ長く出ている丸太ん棒の端をもって、ううんと力一杯もちあげてみました。
めきめきとまた高い音がしましたが、果して檻と床との隙間は、さらに五センチほども広がりました。しめたと帆村は勇敢に、檻の下に頭を入れました。
5
帆村探偵は一生懸命です。
檻と床との隙間に、顔を横にして入れると、うまく向こうへ頭がでました。しかしとたんに胸のところで支《つか》えました。
「一彦君、もっとしっかり」
一彦少年の腕はもう折れそうでした。しかしここで帆村を檻の外に出さなければとおもい、うんと腰に力を入れて、ええいと丸太ん棒をもちあげました。
帆村の体はまたすこし向こうへ出ましたが、こんどは帆村おじさんのお尻が支えてしまいました。
一彦は、このときあまりに腕がぬけそうなので、ちょっと力をゆるめた拍子に、鉄の檻は正直に下りました。
「あ痛い。ああっ――」
帆村おじさ
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