それは天井から床までとどく鉄の棒が、さしわたし五メートルもある円形に並んでいる鉄の檻でありました。
こうなると、出ようとしても出られません。鉄の檻を、もう一度天井にひきあげてもらわないかぎり、この檻から外に出ることはできないように思われます。
ピストルをうっても、もう怪塔王にはとどかないし、その上、おもいがけない鉄の檻にとりかこまれたのですから、帆村も一彦も手も足もでません。
「一彦君、ここへはいるのには、もっとよく調べてからにすればよかったね。これでは、僕たちは、怪塔王につかまるためにわざわざやってきたようなものだ」
といえば、一彦少年は思いのほか元気な顔をあげて、
「おじさん、だめだなあ。こんなになってからいくら弱音をはいても、なんにもならないじゃないか。それよりは元気を出して考えるんだよ。一生懸命になって考えると、またすてきなことがみつかるよ」
「よく言った、一彦君。おじさんが弱音をはいたのはわるかった。さあ元気を出して、怪塔王とたたかうぞ」
すると近くでくすくす笑う声がしました。はっと目をあげてみると、それは怪塔王が檻の中をのぞきこみながら、心地よげに笑っているのであ
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