と、怪塔王は寝台を向こうへ下りようとして、後向きとなりました。
(今だ!)
帆村探偵は、大胆にも怪塔王がうしろを向いたすきをのがすことなく、うしろから、「やっ」と掛声《かけごえ》して飛びつきました。
「な、なにをする」
怪塔王はせせら笑いました。そして後をむき、片手をのばすと、帆村をどしんとつきとばしました。
「あっ――」
怪塔王の力のおそろしさといったら、まるで自動車に跳ねとばされたような気がしました。
さすがの帆村も、ころころと転がって、うしろの壁にどしんとつきあたりました。
するとそれが合図でもあるかのように、がちゃんと大きな音がして、天井《てんじょう》からなにか黒い大きいものがどっと落ちて来ました。帆村は一彦の名を呼びました。そして二人は抱きついたまま、思わず首をちぢめました。
鉄の檻《おり》
1
天井からおちて来た黒い大きいものは、一体なんであったでしょうか。怪塔の正体はいよいよ出《い》でて、怪また怪です。
「あっ、これは鉄の檻《おり》だ!」
帆村は身のまわりを見まわして、びっくりしました。天井からおちて来たのは、実に鉄の檻でした。
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