なんだ。早く言え」
「貴下は大利根博士ですか、それとも怪塔王ですか」
「そんなことは、どっちでもいい。ほら、もう念仏でも唱えろ」
もう余裕はありません。帆村の体は、ごろりと一転して、どぶんと荒潮のなかにおちてしまいました??
2
「あっ、落ちた!」
大利根博士は、思いがけないできごとに、殺人光線灯のボタンをおすことを忘れて、帆村の落ちた荒びる水面をきょろきょろとながめました。
大きな水音は、しばらく洞穴のなかを、わぁんわぁんとゆりうごかしていましたが、やがてそれも消えてしまいました。
「ど、どこへ行ったんだろうか。溺《おぼ》れてしまったのか、それとも渦にまきこまれてしまったかな」
ぼんやり黄いろく光る魚油灯を、海水のちかくへずっとさしだして見ましたが、帆村の頭も見えず、水を掻《か》く音さえきこえませんでした。荒潮のなかに落ちた帆村は、そのままどこかへ姿を消してしまったのです。
とうとう帆村は、浪にのまれて溺れ死んでしまったのでしょうか。それとも何所《どこ》かに生きているのでしょうか? 洞穴のなかを、荒潮は大臼《おおうす》をひきずるような音をたて、あいかわらずはげ
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