、そこにいたな」
 魚油灯が大きくゆらいで、岩礁のうえに腹匐《はらば》いになっている帆村探偵をみつけました。
 もう駄目です。帆村探偵の一命は、風前の灯火《ともしび》も同様です。殺人光線が帆村の方にむけられ、そしてボタンがおされると、もうすべておしまいです。
 帆村が岩礁のうえに腹匐いになっていたのは、毒ガスからすこしでものがれるためでありました。下には荒潮がぼちゃんぼちゃんと岩を洗っていまして、そこにすこしばかりの風が起っていました。だから重い毒ガスは、下に溜《たま》ろうとしても、波のためにあおられ、吹きあげられてしまいます。そしてどこを潜《くぐ》って来るのか、一陣の風がすうっと吹いて来るのです。どこまでも沈着な帆村探偵は、こうしたわずかの安全地帯をもとめて、辛《かろ》うじて息をついていたのに、いまや大利根博士の持つ殺人光線灯が、最後のとどめを刺そうと狙っています。
 不意に帆村は、ぽんと蹴られました。
「あ、痛!」
 思わず彼は、声を出してしまいました。
「ふふふ、まだ生きていたか。いよいよ殺人光線灯を食《くら》って、往生しろ!」
「待て! 最後に、ちょっと聞きたいことがある」

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