とため息をついて、うなずきました。

     5

「それで博士、貴方が、その岩をこっちへのぼっておいでになるとき、怪塔王の悲鳴をお聞きになりませんでしたか」
 帆村探偵は、さっきから聞きたいとおもっていたことを大利根博士に問いただしました。
 すると博士は、大きくうなずき、
「ああ、たしかに聞いたとも。たいへんな声が頭の上で聞えた。と思うと、人間が上から降ってきて、谷底へおちて行った。あれが怪塔王だったのか」
 帆村は、それを聞いて目をかがやかし、
「ああ、博士もそれを御覧になったのですか。それは幸でした。それで怪塔王は、結局どのような最期をとげましたでしょうか」
「うん、それは――」と博士は、くるっと目をうごかし、「それははっきり覚えていないが、なんでもその怪塔王の体は、谷底の岩の上に叩きつけられた。そのとき、くるしそうな声を出した。そこで岩につかまっていたわしは、こわごわ下をのぞいた、ところがそのとき怪塔王の姿は、岩の上になかった」
「ほほう、すると怪塔王は逃げたのでしょうか」
「いや、そうではないよ」と博士はつよく首をふって、「怪塔王の体は一たん岩にあたってから、勢あまっては
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