具合に――」
 と、一彦が口をとがらせ、腰を曲げてよぼよぼと老人の通った砂の上を歩いてみせますと、ミチ子はおなかを抱《かか》えて、ほほほほと笑い転げました。
 ミチ子はあまり笑いすぎて、息ができないくらいでしたが、そのうちに兄の一彦があまり静かにしているので、はっと思いました。
「兄さん、どうしたの」
 一彦は返事もしないで、腰をかがめてじっと砂の上を見つめています。
「ミチ子、来てごらん。変なものが――」

     3

「ミチ子、来てごらん。変なものが――」
 という一彦の声に、ミチ子はいきなり胸をつかれたようにびっくりし、兄のそばへとんでゆきました。
「ほーら、こんなものが落ちている」
 と一彦が指さすところを見ると、砂の上に妙な形をした鍵《かぎ》が一つ落ちていました。
「あら、鍵ね」
 鍵にはちがいないが、普通の鍵の十倍ぐらい大きいようでした。色はまっくろで、鍵の切りこんだ牙《きば》みたいなところが、まるで西洋のお城の塔のような形をしています。その上|怪《あや》しいのは、その鍵を握《にぎ》るところについている彫《ほ》りものです。それはよく見ると猿の頭の形になっていました。その
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