クの下に、どんな顔があったでしょうか、息づまるような瞬間です。
怪塔王は、しばらくうつむいていましたが、やがて顔をしずかにあげました。
鬼神の顔か? それとも国宝科学者といわれた大利根博士の顔か?
いや、そのどっちでもありませんでした。それはのっぺりした若い西洋人の顔でありました。まったく見も知らぬ西洋人の顔です。
(おや、これが怪塔王の素顔か!)
帆村も、小浜も、ともにちょっと呆気《あっけ》ない感じがしないでもありませんでした。
「さあ、これがわしの素顔だ。よく見てくだされ」
そういう声は、いつも聞きおぼえのある憎い怪塔王の声でありました。すると、この若い西洋人が、汐ふきのマスクをかぶって、あのように大胆な悪事のかずかずをやっていたのです。
「貴様は一体、どういう素性《すじょう》のものか」
兵曹長が、こらえきれないといった風に、怪塔王に問をかけました。
2
「わしの素性か、そんなことはどうでもいい」と、怪塔王はあらあらしく息をはずませながら、
「わしは日本海軍をやっつけて、東洋をめちゃめちゃにするつもりだったが、失敗した。失敗したうえからは、わしはなにもいい
前へ
次へ
全352ページ中299ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング