味をこめて、いよいよ最後の決心をかためさせたのです。勇ましいといっても一彦はほんの少年です。ついて来るといって聞かないので、やむをえず一しょにつれてきましたが、これからさきの危険をおもうとき、帆村おじさんの心配はひととおりではありません。
帆村探偵は、階段のすき間から、そっと三階の様子をうかがいました。
部屋のなかには、弱いスタンドが一つ、ほのあかるい光を放っているだけでありました。円形になった室内には、たくさんの本棚がならんでいます。テーブルの上には、わけのわからない機械が組立中のまま放りぱなしになっています。また高い脚のある寝台も見えました。
帆村は、一彦に合図をして、じっと耳をすませました。どこからか、ごうごうという鼾《いびき》のおとがきこえてまいります。
(しめた、怪塔王は、あの寝台のうえで眠っているんだな)
よし、それなら飛びこむのは今だと、帆村はにっこり笑い、一彦をそばへ招くと、そっと耳うちをしました。
3
帆村探偵は、階段の「最後の段」をおどりこえ、床《ゆか》の上にえいと飛びあがりました。そしてさっと照らしつけた手提《てさげ》電灯は、怪塔王のねむる
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