しかしまるで軍艦の機関室みたいだね」
「塔の中に、軍艦の機関室があるなんて、変だね」
「うむ変だねえ。なにか訳があるのにちがいない――さあ、いよいよこの上に怪塔王がいる部屋があるのにちがいない。一彦、しっかりするんだよ」
 と、帆村探偵は一彦をはげまし、三階につづく螺旋階段の手すりに手をかけました。

     2

 怪塔王の部屋は、いよいよこの階段を一つのぼれば、そこにあるのです。帆村探偵もさすがにのぼせ気味で、息づかいもあらくなってまいりました。一彦少年はというと、これは体をちぢめて、鼠《ねずみ》をねらう子猫のようなかっこうに見えました。
 足音をしのばせながら、螺旋階段を一段ずつのぼっていく二人のひたいには、いつしかあぶら汗がねっとりとにじみでました。帆村の右手には、愛用のコルト製のピストルがしっかとにぎられています。一彦少年は、一たばの綱をもって、いつでもぱっと投げられるようにと身がまえをしていました。
 まっさきに立っている帆村が、下をむいて手で合図をいたしました。
(おい一彦君、いよいよ階段をのぼりきるぞ。怪塔王はすぐそこにいるんだ。かくごはいいか)
 と、いったような意
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