これには、勇敢な兵曹長もちょっとひるみました。怪塔王の手にある妙な形のピストルは、このままではどうしても小浜兵曹長の胸を射ぬきそうです。
 小浜兵曹長は、じっと怪塔王を睨んで立っていました。
 兵曹長の息づかいは、だんだんとあらくなって来ます。額から頬にかけて、ねっとりした汗がたらたらと流れて来ます。
「うぬ!」
 とつぜん、兵曹長の体は、砂原の上に転がりました。ごろごろっと転がって、怪塔王の足もとを襲いました。
 そうなると、怪塔王のピストルのさきは、どこに向けたがいいのかわかりません。
 だだーん、だだーん。
 はげしい銃声がしました。砂が白くまきあがりました。
「こいつめ!」
 いつの間にか、兵曹長は砂原の上に立ちあがっていました。
 ピストルをもった怪塔王の右手に手がかかると、一本背負いなげで怪塔王の体を水車のようになげとばしました。
「ううむ」
 小浜兵曹長は、呻《うな》る怪塔王に馬のりとなりました。妙な形のピストルは、兵曹長の靴にぽーんと蹴られ、はるか向こうの岩かげにとんでいってしまいました。
「さあ、どうだ。うごけるなら、うごいてみろ」
 怪塔王は、帯革でもって後手《うし
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